Book review / 世界の経営学者はいま何を考えているのか/入山章栄


世界の経営学者はいま何を考えているのか/入山章栄

 

経営学」というとどんなイメージをするだろうか?

大抵の人は、ピーター・ドラッカー松下幸之助など、いわゆる名言や経営哲学を残した人たちを研究する学問だと考えるのではないでしょうか。

 

私も、大学に入っていわゆる経営学を学ぶまでは、そう思っていました。しかし、こんなに学際的で幅広い分野の知識が必要な学問はあまりないのではないか、というくらい奥深い学問でした(アプローチの豊富さでいうと、文系の中では政治学分野での国際関係論に近い)。

本書では、経営学の最先端ではどんなことが話題にされ、研究がなされているか、専門用語を出来るだけ排除したわかりやすい言葉で記述しているので初学者でも取り組みやすいと思います。

 

さて、冒頭で述べた、いわゆる経営哲学的な研究も、勿論否定するわけではないし、それ自体有用であることも多いと思います。孫氏の兵法や世阿弥風姿花伝をビジネスに取り入れようとする動きすらあります。ジャンルを問わず古典に親しみをもつことには賛成です。

しかし、経営学においては、実はもう少し現代的になっていて、おおざっぱにいうと、「科学的に」業績の高い企業のパフォーマンスを分析し、これを他の企業でも再現するには何が必要か?といったことを主に統計学的手法を用いて研究しています。

統計学という言葉を見てアレルギー反応を覚えた方も、大丈夫です。本書ではそんなに深堀りしません。

 

私が印象に残った概念として「トランザクティブメモリー」があります。以下抜粋です。

“組織の記憶力に重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの「誰が何をしっているか」を知っておくことである”

who knows what」が明らかになっているか。

例えば会社にいる自分を想像してください。あなたは営業で、経費申請しないといけないけど、旅費規程の上限が外貨だとどういう扱いになるのか、知りたい。こういう時に「この人(部署)に聞けば答えてくれる」がすぐに思い浮かぶか。

これは、組織の記憶力に関わる問題で、上記は些細なことですがこういうところで詰まることなくコミュニケーションが円滑に行われる組織(企業)は高いパフォーマンスを発揮できるといえるでしょう。

 

他にも、「日本は集団主義、欧米は個人主義」を経営学的に検証してみたり、事業会社(いわゆる大企業)におけるベンチャー投資において最も有効と考えられる手法などを紹介しています。

学生からサラリーマン、経営者まで、こういう知識・考え方で話せる人が世の中に増えると面白くなるのではと感じました。

 

おまけ、

この間、書店に行ったら内容をさらに充実して分厚くなった最新版が出ていたので、これも近いうちにチェックしたい所存。絶対面白い。