Book review / エネルギー・黒木亮

エネルギー・黒木亮
 
日経新聞に連載していたセミフィクションの経済小説です。
就活を始めるときに、大学の先輩に勧められて読み始めました。
その先輩からはハードカバーの上巻を譲ってもらったのですが、面白かったので下巻は自分で購入しました。
 
テーマは資源開発で、日本の商社プレーヤーが、中東イラン、極東ロシアでそれぞれ油田を開発するために各国政府や銀行、環境団体などと折衝しながら案件を進めていくストーリーになっています。
細かい描写は置いておいて、読み進めていくと自然と資源開発一般の知識はカバーできるようになります。
よく取材されているようで、その時々の社会背景、何が原因でスタックしているのか等面白く読み進めることができました。
また、話者の視点が変わるので、それぞれの利害関係者から同じ案件を冷静に俯瞰でき、資源開発にかけるそれぞれの思惑やメリットデメリットもわかるようになると思います。
 
特に日本は、燃料資源を輸入に頼らざるをえない国であり、国として資源の確保を命題にしているので、これからも、対象のコモディティが(例えば原油LNG)変わることがあっても基本的に輸入に頼るシステムは変わらないのではないのでしょうか。
そして輸入するためには資源の開発とその利権・商流の確保をする仕事が必要になります。
 
ただし、最近の日本では、資源ビジネス、とくに調達における商社の役割は縮小傾向にもあります。
たとえばLNGの話ですが、東京電力中部電力の共同出資により設立された「JERA」などは独自に資源開発のいわゆる「上流」に乗り出しており、資源調達におけるビッグプレーヤーとして注目されています。他の電力会社やガス会社もこの動きに追随しています。
九州の西部ガスは独自にロシアのガス大手であるノバテクとアジア向けLNG販売を計画するなど独自色が強い。
 
とはいえ、商社がもつ膨大な資金力と情報網に頼らざるを得ない場面もまだあるので、各社完全に独力というのも難しいでしょう。
 
いずれにせよ、本書、これから資源ビジネスを学びたい人に、入門書としておすすめです!